<html><head><meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS"><title>懐胎と分娩 [4/5]：芸術性理論研究室 metaforce iconoclasm</title></head><body bgcolor=#FFFFFF background=bg.jpg text=#303030 link=#303030 vlink=#505050><font size=2><a name=top></a><div align=center><font size=1>[<a href=../../index.html>HOME</a>]<br>&or;<br>[<a href=../index.html>研究レポート目次</a>]<br>&or;<br>[021]</font></div><div><font size=1>─</font><br><strong><font size=3>懐胎と分娩 [4/5]</font></strong></div><div align=right><font size=1>─</div><div align=center>【 頁：<a href=index.html> 1 </a>：<a href=2.htm> 2 </a>：<a href=3.htm> 3 </a>：4：<a href=5.htm> 5 </a> 】</font></div><p>&gt;&gt; これは懐胎による膨張も同様だろう。胎児の成長にともない増量し、満ち満ちていく羊水は子宮内膜から腹部の内壁をも現出させる第一契機である。量化していく羊水は内部構造を変化させ腹部表面へと、その延長性を現出させ、母の手の平に捕らえられる。子宮によって境界化された羊水自体が腹部内壁を圧迫せずとも、膨張によって硬化した肌を感じ取る母は、自ら臓器類を圧することによって、羊水全体の存在知覚を行なうばかりでなく、肌自体の単位化への道程を切り開いている。弾性を失った肌をなぞる手の平は斥力を受け、自己構造に異物部分を創り出し、肌という境界把持の中で、自己を観察する視点と心的視点とを肌によって接続させる。無論、この把持された肌は自己構造の一部なので、受動態は能動へと回収帰結し、微分不可能な境界自体を知るに至る。しかし硬化した肌は静的であるが故に産出系として弱く、ここで母は理解のために胎動を利用することになる。</p><p>　もしも胎児が臍帯によって子宮の中心に固定されていたのならば、もしくは羊水が介在せず、子宮によって胎児が密に包まれていたとするのならば、胎感は蠢きと変わるところなく線形の文脈を構成し、母は自己の肌を知ることなく、分娩に対して、さほどの価値を読み与えないかもしれない。排泄と同等の自己分化として描くか、自己増殖&ldquo;&nbsp;alter ego&nbsp;&rdquo;として描いてしまうだろう。ここには肌理の触知における形而上学的な側面が大きく係わっている。単一の肌理をもつ対象表面をなぞる時、我々は前景を構成しつつも、触知の行為読解全体を等質化し、背景自体に擬似知を与えているに過ぎない。触覚における没単位性の意味するところとはそこにある。光沢に仕上げられている対象表面に『なめらかさ』を読み取る者は、非自己の細分化を行っているのではなく、触覚の限局性によって『なめらか』という単一文脈を梱包した組織的世界のみを認識している。それは差別・区別なき没対象的な混沌でありながら、なぞればなぞるほどに充足度が増していく。触知の同語反復が触覚の遷移運動によって時間論的に流動化され、自他円環のまどろみに捕われ続ける。たとえ触覚運動の挙動軌跡が角や重曲線を描こうと、「なめらかさ」は『なめらかさ』のまま深化を辿っていく。この非対称的でありながら相互に静的なダイアドを構成する触覚内容に「他(者)と環境」が現れるのは、他(者)を担う質差を待たなければならない。膨張した腹部表面を自らなぞる母の手の平に対して、傷跡(臍)が不意に現れた場合、その上を通過する段階と前後との関係が発生し、その刹那に肌理の触知文脈は単語構成を果たす。ここで初めて触覚環境は「他(者)と環境」の原概念を得ることになる。対象群に対して、どちらが他(者)で、どちらが環境であるのかの区別・配分は未完了・無根拠的であるが、傷跡(臍)の出現によって、前景と背景が生まれ、母は有意味的に自己の腹部表面を理解する契機を得ることが可能になる。</p><p>&gt;&gt;<a href=5.htm>次頁へ続く</a></p><div align=center><font size=1>【 頁：<a href=index.html> 1 </a>：<a href=2.htm> 2 </a>：<a href=3.htm> 3 </a>：4：<a href=5.htm> 5 </a> 】</div><div>─<br>─</div><div align=right>&copy; <a href=../../copy.htm>ayanori.jp</a><br>─<br>─<br>[△<a href=#top>PAGE TOP</a>]<br>[<a href=../../index.html>HOME</a>]<br>[<a href=../../map.htm accesskey=0 directkey=0 nonumber>MAP</a>]</div></font></font></body></html>