<html><head><meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS"><title>肌を切り裂く [4/4]：芸術性理論研究室 metaforce iconoclasm</title></head><body bgcolor=#FFFFFF background=bg.jpg text=#303030 link=#303030 vlink=#505050><font size=2><a name=top></a><div align=center><font size=1>[<a href=../../index.html>HOME</a>]<br>&or;<br>[<a href=../index.html>研究レポート目次</a>]<br>&or;<br>[024]</font></div><div><font size=1>─</font><br><strong><font size=3>肌を切り裂く [4/4]</font></strong></div><div align=right><font size=1>─</div><div align=center>【 頁：<a href=index.html> 1 </a>：<a href=2.htm> 2 </a>：<a href=3.htm> 3 </a>：4 】</font></div><p>&gt;&gt;切開は湧出する血液や臓器類、ともなう痛みを制作の眼目としているのではなく、あくまでも「傷=口」による創造にある。生きる肢体を切り裂いた場合に起こるであろう筆頭的な諸問題は、構造再構成へと帰結し、臨在自体、もしくはそれ以前の階梯に還元されるのみであり、切開による創造を成さない。そのため、それらは本論では捨象され、「傷=口」のみを着目の対象とするが故の(死)体ではあるが、それだけではなく傷=口を癒さないためでもある。痕跡による無ではなく、腐敗の途を歩ませることによって、破壊対象としても傷=口を開けておかなければ、無へと舞い戻る場面において「意志ある人の生」を挿入できない。保護と瓦解の可能性を絶やさない事後でなければ、創造ではなく物理である。</p><p>　それ故に我々はその傷=口を読み取ることになる。まずは可感対象の性について確認したい。日常における統覚認識の「対象」とは、観察者の包囲力を守り、環境に位置しながらも、地平上にはなく、逆パノラマ化された集束的な局所存在である。それは通時的かつ共時的に視触化可能な「一なる延長」である。そのため、手と目による被抱擁を許し、唯名論を至上要求しながら単語化を果たし、文法・系へと侵=入してくる。往々にしてロゴスを利用しなければ客体化できない心的存在は、対象に界域を与えず、文字のごとく截然なる輪郭を構成する。対象とは内部期待のパッケージである。そこで切開による制作物が問題になる。そこにある「傷=口」は『何』を梱包しているのであろうか。その口は『何』を銜え含んでいるのであろうか。銜え含む構造に強度・ボリュームの読解賦与は可能なのであろうか。切り裂かれることによって、肌はバインド可能な皮膚化を果たしてはいるものの、どこからどこまでが傷=口に妥当するのであろうか。</p><p>　再度、傷=口を制作してみよう。まったきもの・面へ刃を刺し、肌が描く線形方向と平行して腕を引いてみる。これだけで難なく傷は口を開く。それ以前には存在しなかった切断面が発生し、ゆがんだ線(分)に囲まれた間隙が生まれる。腕を引き、一線を描く単一行為によって複合的な傷=口がつくられる。しかし、その行為の軌跡上には何もなく、何も残らない。一本の刃がつくる切開は触れられず、執刀者は行為後に積極的な文脈構成を没却してしまう。握るナイフの冷たさ、皮膚を突き破る衝撃・反動、引き降ろす腕に込めた力、裂かれていく肌が奏でる連続的な旋律、それらの感触を覚えている確かさは、それ自体に対応する構造変化がなく、切断面によって指し示されるのみである。不定形な切断面は傷=口の境界ではあるものの、それが内包する充足的な内容構造は同一地平上にはなく、飛躍の読解が要求され、被臨在化されることによって召喚される。</p><p>　その質的複合性を纏うため、傷=口は制作行為の残滓であるにもかかわらず、作品の必須項である『中心』がなく、その占有的な不在性によって区別すら意味しない。鑑賞の偽法によって存在の矛盾を有機的に溶きながら解きほぐされ、傷=口は創造化されていく。その傷=口をなぞる手の平をふるわせる二本の切断面は傷=口の「側」に対応するであろう「何も触れていない」手の平の部分に自己直知の含意自体を指示・要求し、切り裂いた過去を意味として引き寄せ、超越の循環の中で生を満たしていくのである。</p><p align=center><font size=1>METAFORCE ICONOCLASM 2008<br>ayanori [高岡 礼典]</p><div align=center>【 頁：<a href=index.html> 1 </a>：<a href=2.htm> 2 </a>：<a href=3.htm> 3 </a>：4 】</div><div>─<br>─</div><div align=right>&copy; <a href=../../copy.htm>ayanori.jp</a><br>─<br>─<br>[△<a href=#top>PAGE TOP</a>]<br>[<a href=../../index.html>HOME</a>]<br>[<a href=../../map.htm accesskey=0 directkey=0 nonumber>MAP</a>]</div></font></font></body></html>